シンガポールに着いて、
クーラーが冷え冷えに効いた
空港のロビーから、一歩外に出ると、
むわっと熱帯の空気が身体を包みます。
シンガポールは、
私にとって懐かしいと感じる国の1つです。
シンガポールはマレー半島の先端に位置する
東京23区ほどの小さな国ですが、
1965年にマレーシアから分離。
当初は資源もないような国でしたが、
1980年から2010年まで、
平均でGDP成長率は7%以上という、
飛躍的な経済成長を遂げました。
2012年5月、東京。
日比谷の帝国ホテルのスイートルームで、
都市国家シンガポールを建国し、
アジア屈指の政治指導者である
リー・クアンユーに、
日経の記者太田泰彦氏が、
最後の来日となった
インタビューをしました。
“言外に「焦るな」
と日本人に呼びかける
リー・クアンユーを前にして、
私は彼が伝えようとしていたメッセージを
受信できないでいたように思う。”
とも書いています。
リー・クアンユーが日本に放ったメッセージ。
“「今の日本社会を見ていて、
以前と大きく違うと感じるのは、
国会が自暴自棄とも思える不毛な議論に
陥っていることです。
そして、日本の国民は日本人らしい
辛抱強さを失っているように見えます。
あなたたち日本人は、
ソワソワしていて腰が定まらない。
そんなに焦って、いったい世界のどこへ
行こうとしているのですか。」“
“アジアの時間(Asian time)
というキーワードを何度、
口にしただろう。”
(「プラナカン」太田泰彦
日本経済新聞出版社 2018年6月)
また、「創造のエネルギー」を
解放することが重要だと論じる
ケン・ロビンソンが「時間の問題」を
語っています。
彼は、クリエイティビティ、革新、
人材開発の第一人者で、
2006年のTEDカンファレンス
「学校教育は創造性を殺してしまっている」
の講演は、とても有名ですね。
文化によって、
時間の感覚が異なるという指摘です。
“1972年、中国を訪問中の
リチャード・ニクソンは、周恩来に、
「1789年のフランス革命が
西洋文明に与えた影響は
何だったと思われますか」
と尋ねました。
周恩来はしばらく考えた後、
ニクソンにこう答えました。
「結論を出すのはまだ早すぎます。」
翌日の新聞の見出しを気にしている
アメリカの大統領にとって、
この原因から結果までの雄大な時間の感覚は
あまりにも違いすぎました。“
(「パワー・オブ・クリエイティビティ」
ケン・ロビンソン 2018年10月
日経BP社)
今、私たちはこんな風に、
ゆったりとした時間の感覚が
体の中にあるでしょうか?
何でも、速く、すぐに、もっと早く、
昨日終わっているはず。
カツカツと、時間を切り裂いて、
1ピース、1ピースと散らかって、
気がつけば1日が過ぎた感覚だけ、
ということはないですか?
もし今、あなたがそう感じたなら、
想像してみて下さい。
大きな時の流れと広がりを。
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